髪が抜ける原因は実は1つだけではありません。
脱毛症にはさまざまな種類があり、ほぼ全ての脱毛症に対処法があります。
そこで今回は脱毛症の種類についてご紹介しつつ、原因や対処法について詳しくご紹介していきたいと思います。
内田 純平
30代前半の頃から薄毛に悩み、さまざまなAGAクリニックを調査しました。実際に飲み薬や育毛剤だけに限らずメソセラピーやHARG療法などの治療方法を試し、一時期は植毛まで考えました。が、無事に復活できました。その経験を活かしてAGAに悩むの皆さんのサポートをしていきたいと考えています。
そもそも「脱毛症」とは?
脱毛症とはその名の通り、自身が生えることを期待していた毛髪が生えなくなった状態、もしくは抜けてしまった状態のことを言います。
医学的には毛密度が生来の50%以下になった状態を「脱毛症」と呼びます。
脱毛症には数多くの種類があり、最も見かけるのは「男性型脱毛症(AGA)」かと思います。他にも女性型の脱毛症、円形脱毛症、脂漏性皮膚炎など、さまざまな種類があり、それぞれ原因・対処法が異なります。
次の項目で、各脱毛症の特徴と原因、治療方法について解説していきます。もし自身が該当しそうと思ったら、ぜひ参考にしてみてください。
「男性型脱毛症(AGA)」について
男性型脱毛症、AGAについてまずはご紹介します。男性が薄毛になる多くの原因はAGAです。
男性型脱毛症(AGA)とは?特徴について
AGAとは「男性型脱毛症」とも呼ばれ、進行性の病気であり前頭部、つまりおでこから薄くなっていくパターンと、頭頂部から薄くなっていくパターンがあります。
AGAは中高年の方に多いように思われがちですが、実は20代の方でも発症率は10%と若い方にとっても他人ごとではありません。
日本人男性の場合には 20 歳代後半から 30 歳代にかけて著明となり,徐々に進行して 40 歳代以後に完成される.25 年前の本邦における男性型脱毛症の統計から,日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約 30%と報2764 ● 日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン作成委員会告されている8).この発症頻度は現在もほぼ同程度であり,20 代で約 10%,30 代で 20%,40 代で 30%,50代以降で 40 数%と年齢とともに高くなる
引用:日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」より
男性型脱毛症(AGA)が発症する原因
- 男性ホルモンの「テストステロン」と「5α還元酵素」が結合し、「ジヒドロテストステロン」を作る
- 「ジヒドロテストステロン」が生え際や頭頂部にある「毛乳頭細胞」の「男性ホルモンレセプター」に脱毛・髪の成長を止めるシグナルを出す
- 「男性ホルモンレセプター」が「TGF-β」という脱毛因子が発生し、毛乳頭細胞に脱毛のシグナルを出す
AGAが発症する原因については上記の表の通りです。
「男性ホルモンが多いとAGAになりやすい」と言われるのはあながち間違いではなく、5α還元酵素の多い方がテストステロンを過剰に分泌するとジヒドロテストステロンが大量に発生し、薄毛の原因となるのです。
また、5α還元酵素の活性度や男性ホルモンレセプターの感受性も遺伝するとされており、母方の親族に薄毛の方が多い人はAGAを発症する可能性が高いです。
男性型脱毛症(AGA)の治療方法
- フィナステリド、デュタステリドで5α還元酵素を抑制する
- ミノキシジルで発毛を促進する
AGAの治療方法は大きく分けて2つあります。
日本でAGA治療薬として承認されているのは日本皮膚科学会も利用を推奨しているフィナステリド、デュタステリドという内服薬と、ミノキシジルという外用薬です。
フィナステリドとデュタステリドは5α還元酵素を抑制する作用がありAGAを予防し、進行を抑制します。まだ「最近抜け毛が多い」「髪の毛が細くなってきた」という段階の方ならば、これだけでAGAは予防できます。
一方でもうすでに抜け毛が始まっていたり、薄毛が気になるという方はミノキシジルの外用薬を用いて発毛を促進する必要もあります。
ミノキシジルは毛乳頭細胞という細胞に働きかけたり、血管を拡張することで栄養が行き届きやすくする作用があるので、フィナステリドまたはデュタステリドと合わせて利用することで、AGAを予防しつつ発毛を促進できます。
「女性の薄毛(FAGA)」について
FAGAは女性の薄毛であり、AGAと同じものであると考えられていたことから英語で女性は意味する”Female”の頭文字をつけたFAGAと呼ばれてきました。
しかし最近の研究によると、AGAとは症状や原因が異なるものであることがわかってきています。
女性の薄毛(FAGA)とは?特徴について
FAGAはAGAと異なり、局所的な脱毛が起こるのではなく、頭皮全体が薄くなっていきます。
AGAはおでこや頭頂部など一部の部分から薄毛が始まり、それが進行し、だんだんと広がっていくものですが、FAGAは全体的に髪の毛が減っていきます。
女性の薄毛(FAGA)が発症する原因
- はっきりと特定はされていない
- ホルモンバランスが原因と考えられている
FAGAの原因には様々なものが考えられますが、実はまだはっきりと特定はされていません。広範囲にわたって症状が現れるのでなかなか理由が特定できないのです。
主にホルモンが原因であると考えられており、ホルモンバランスが乱れることでFAGAが起こるとも言われていますが、現段階では明確な根拠はありません。
女性の薄毛(FAGA)の治療方法
- 外用薬:ミノキシジルで発毛を促進
- 内服薬:髪に良い成分を豊富に含むパントガールを服用
FAGAの治療方法ですが、AGAと同じように外用薬と内服薬を用いることが多いです。
外用薬はミノキシジルを用います。ミノキシジルは血管を拡張して栄養が届きやすくさせたりする作用があるので、本来頭皮に届くはずであった栄養が届くようになり、発毛を促進することができます。
内服薬は「パントガール」というものを用います。女性の薄毛治療のために服用が認められている治療薬で、ケラチンやパントテン酸カルシウム、シスチンなどの髪の毛の生成に良いとされている栄養素を含んでいる薬です。
これまでの研究で、パントガールで重篤な副作用が発現したという報告はされていませんが、妊娠中・授乳中の方は念のため治療を始める前に医師に相談することをおすすめします。
「円形脱毛症」について
円形脱毛症も多くの方が悩んでいる脱毛症です。特徴や治療方法について一緒に確認していきましょう。
円形脱毛症とは?特徴について
円形脱毛症とは楕円形または円形状に髪の毛の一部が抜け落ちて、その部分の髪の毛が抜けなくなってしまう状態のことで、ほとんどが10円玉程度の大きさです。
しかし、頭皮全体に広がるものもあり、中にはまつげや眉毛、体毛などに及ぶものもあります。
円形脱毛症が発症する原因
- はっきりとは分かっていない
- 自己免疫性疾患と考えられている
- 心身の疲労やストレスも原因の1つとされている
円形脱毛症の原因は正確には分かってはいませんが、自己免疫性疾患と考えられており、疲労が原因であるとされています。
特に精神的な疲労がストレスが発症するきっかけであるとされており、社会人の方で、激務などが原因で心身ともに疲れ果てた結果、円形脱毛症になってしまったという方も多いです。
円形脱毛症の治療方法
- 軽度:ステロイドの塗り薬+ミノキシジルの注射
- 重度:局所免疫療法
円形脱毛症の治療方法は「どの程度進行しているか」によっても分かれますが、基本的にはステロイドの塗り薬とミノキシジルの注射です。
しかし、重度の場合は局所免疫療法を行うこともあります。局所免疫療法は日本皮膚科学会のガイドラインを確認してみると
以上のように,局所免疫療法の発毛効果に関して高い水準の根拠があり妥当な治療法であると評価される.局所免疫療法は特にS2以上の多発型,全頭型,汎発型の症例に,年齢を問わず第一選択肢として行うよう勧める.
引用:日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」より
有害事象として,接触皮膚炎症候群,局所のリンパ節腫脹,頭痛,倦怠感,蕁麻疹,色素沈着,色素脱失などを併発することがあるので注意が必要である
引用:日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」より
と記載されており、利用こそ推奨されているものの、副作用の危険も注意喚起されているので、あらかじめ医師としっかりと相談を行った上で副作用の危険性について把握してから治療を行うようにしましょう。
「全身脱毛症」について
全身脱毛症とはその名の通り全身の体毛が抜けてしまう症状です。特徴や原因について一緒に確認していきましょう。
全身脱毛症とは?特徴について
全身脱毛症は「汎発性脱毛症」とも呼ばれ、頭部や眉毛はもちろんのこと、まつげやヒゲ、脇毛など全身の体毛が抜ける病気です。
全身脱毛症が発症する原因
- 原因は分かっていない
- 自己免疫反応という説が有力とされている
残念ながらまだ全身脱毛症の原因については医学的に特定されておらず、原因はわかっていません。
一説によると細菌やウイルスなどの敵から体を守るために働くリンパ球が毛包組織を攻撃してしまう「自己免疫反応」による脱毛だと言われており、円形脱毛症とも共通しています。
しかし円形脱毛症の治療薬は全身脱毛症にあまり効果がない点には注意しておきましょう。
全身脱毛症の治療方法
- 治療方法は確立されていない
- ステロイド注射を用いることが多い
全身脱毛症の治療方法も確立はされていないのが現状です。
ステロイド注射などのように、異常が発生した免疫細胞の攻撃を抑える効果が期待できるような治療もありますが、確実に効果が出るとは言えません。
その他の脱毛症について
ここまでご紹介した以外にも脱毛症はあります。それぞれ簡単にご紹介していきます。
分娩後脱毛症について
分娩後脱毛症は産後28週間から32週間程度、女性ホルモンであるエストロゲンが通常の100倍、プロゲステロンも約15倍程度分泌されるようになり、髪の毛が抜けにくい状態になります。
しかし、出産後それぞれのホルモン量が出産後に一気に激減し、ホルモン量の急激な変化により抜け毛が発生する症状です。
これは一時的な症状であり、FAGAのように毛髪を支えている器官である毛包が収縮し、髪の毛が生えにくい状態になったりするようなことはありません。
髪の毛が抜けた後には新しい毛髪が生えてくるので、そこまで深刻にとらえる必要はないとされています。
脂漏性脱毛症について
脂漏性脱毛症は皮脂の過剰分泌が原因で、頭皮がべたついたりニキビなどが発生する症状です。これが悪化すると髪の毛が抜けてしまいます。
脂漏性脱毛症の原因はホルモンバランスなどもあるとされていますが、カビが関係しているケースが多く、人間の頭皮に生息している常駐菌のカビの一種であるマラセチアが悪さをしているケースが多いです。
ステロイドや抗真菌薬を用いて治療を行うことで脂漏性脱毛症は完治を目指すことができるので、頭皮がべたついたり、頭にニキビが増えてきた方は早めにクリニックを受診するようにしましょう。
牽引性脱毛症について
牽引性脱毛症とは文字通り髪の毛が引っ張られて抜けたり、血行不良によって髪の毛の成長が妨げられる病気です。
ポニーテールにする際にゴム紐で強く結んでいる方や、ヘアアイロンを過度に使用している方に多い症状です。
治療方法としては、病院に行くというよりは、なるべく髪と頭皮に負担をかけない時間を作り、髪型も髪を強く引っ張る必要がない髪型にすることで改善できます。
まとめ|それぞれの原因を把握して正しい対処をしよう
今回は様々な脱毛症の原因や特徴対処法についてご紹介してきました。脱毛症には様々な種類がありますが、多くの場合は適切に対処することで治療できます。
クリニックで診察を受けたり、生活習慣を整えるなど、適切な対策をして改善していきましょう。